米国産スモモ輸入解禁 不安広がる(21.9.6)
スモモの生産量日本一を誇る南アルプス市では、先月告示された米国産日本スモモ輸入解禁に対し、生産者の間で不安が広がっています。
「通知なし」軽視に不満
農水省は8月19日の官報で、米国産の生鮮スモモ解禁に関する植物防疫法施行規則の一部改正を通告し、同日に施行されました。9月2日には既に約2.6tの輸入が始まりました。
南アルプス市は日本有数の果樹産地で、昨年は約1,200tのスモモを販売しています。市内で生まれた「貴陽」や「皇寿」などのブランド果実も多く生産しています。
JAの李専門委員会と営農指導部では「米国産スモモの供給が増え、それが国産と同時期の出荷になれば価格の低下は免れない。価格補てん等が無ければ農家の生活がますます苦しくなってしまう」と危機感を強めています。
農水省はこの決定について、官報、ウェブサイトでの情報掲載により十分な情報提供が出来ていると考えていたと説明していましたが、県やJAに直接通知をしていませんでした。
山梨県を含む産地からは「産地への事前の説明がなかった」と不満の声が挙がっていました。
産地からの声を受け、農水省は9月6日、これまでの経緯や今後の対応方針を説明するWeb説明会を開催し、当JAも参加しました。
説明会で農水省担当者は、周知に不備があったことを認めました。
また、輸入スモモは長距離輸送を伴うため、価格、品質面でも国産との競合は想定していない事や、輸入の際は臭化メチルくん蒸処理を義務付けているため、病害虫(コドリンガ)が侵入する可能性は無視出来る程低い事などを説明しました。
一方で産地関係者は「他の果実に比べてスモモは少数品目と捉え、扱いが軽んじられているのではないか」「安い果実が輸入されれば、全体的な価格の下落を招くのではないか」と憤りをあらわにしていました。
実物を試食 「糖度高い」
後日、JAは国内で販売されている米国産スモモの「ルビースイート」を入手しました。説明会の資料には掲載されていなかった品種で、1つ100~120g程です。8個入り980円で販売されていました。
試食した中澤豊一組合長は「説明会で農水省担当者は、日本産よりも食味が劣っているため競合の可能性は低いと話していたが、糖度もあり、生食でも十分食べられる。脅威となり得る」と厳しい表情を見せました。
また営農指導部手塚英男次長は「肉質にざらつきと粗さがあるが、糖度は高い。水分量が少ないようなので、日持ちするのではないか」と分析しました。
JA李専門委員会河西隆委員長(64)は「驚いたが、生産者としては今まで通り高品質なスモモを生産していく事が大切だ。今回の事でスモモが注目され、消費者が国産の安全でおいしいスモモを知るきっかけになれば良い」と前向きに話していました。
中澤組合長は「今回の事はまさに寝耳に水だった。国産スモモを守るため、国にスモモ農家が高品質のスモモを生産出来る環境の整備を働きかけて行く」と話しました。